生活と易
第一章 見つめるもの
心の動き
人は何をするにしてもこれからのことに不安を抱えている。やろうかやるまいかと迷っているものである。私達は成功することも、
失敗することも予想する。それがわくわくする恋愛ごとでも、たわいのないかけ事でも、生活の楽しい計画でもである。私たちが何
かする時にけなされたり不快なことを言われることは、何か前途に暗雲が、立ちこめているようないやな気持ちがする。そして悪夢
にうなされることなどで危険を感じる。 今日一日の運勢も本日行うことの大事業の成り行きが表裏一体になっているのかと思った
りする。それならば今おこなうことの成り行き を測ることができないだろうか。
勘を磨こう
私達の毎日はあらわれていることもあり隠れているものもある。心に響く物を聞き取る耳や、心の中で読み取る目や、響くものを
感じとれ る勘を磨くこともあってもよい。「我は宇宙の中心に有り、世のすべてのものが集まり来て、その物の響きや、心に写るも
のを見ることができる。」 と唱えるのは自己中心的であって非難されそうだが、心の目を開くには格好の呪文だ。語の同音で心に響
くものも有る。心の眼で読み取ることができるものもある。そのために聖書や筮竹をさっと割りさばいて読むのもよい。石ころやや
サイコロを投げて出てきた目を見て悟ることもあろう。その時その時でしか行えないもので読み取り勘を磨くのがよい。そのためには
心も体もさばさばとした最高のところにおくことである。
心の在りか
心とはいったい何か。優しい心の持ち主といったり、心根の腐った人と言ったりする。現代は心が育たないとも言う。悪かったり、
よかったりする。いつも平常心で いられない。自分にも、人にも優しくする心を持ったり、疲れない心のいたわりを持つのにはどう
したらよいのかと考えたりする。心というものは、どうやらいたるところに住みどうにでもなるようだ。 なにものにも汚れないもの
はないかと思索すると、心ではなくその奥にあるものに到達するのである。心は汚されて、心は常に悩んだり得意になることがあるが
それを常に抑止する力が存在するものである。人の 考えの及ばぬことを成し遂げうるものは心の世界ではない。それは無限の世界に
はばたく霊の働きである。野に咲く一茎の草花 に自然界から語りかけるものを聞くこともできる。
第二章 磨きあげるもの
易は霊の響き
乾元亨利貞(けんげんこうりてい)は易経の乾の伝の最初の言葉である。これを唱えるとこの世の邪悪なことを退かせることができる
とも言われる。それはなぜかというと、乾は純白で汚 れのない元気というもので、広やかに伸びやかに物事成就していく気である。
元気といい、純白というも人間の空 想上のもので、美しく、厳しく宇宙を織り成す気である。この気を本当に受けている人間にとつ
てはこの言葉は宇宙の真理であり、力を与えてくれるものである。
上爻
五爻
四爻
三爻
二爻
初爻
乾為天(けんいてん)の初爻(しょこう)は「ミミズは用いられない。」
二爻(にこう)は「世に出ようとする青年は大人に認められる。」
三爻(さんこう)「終日励めばあやうけれど咎(とが)なし。」
四爻(よんこう)「惑わずに飛び越せば、咎なし。」
五爻(ごこう)は「世に認められる。大人(だいじん)にあうに利(よろ)し。」
上爻(じょうこう)は「もはや進むところなし。悔(く)い有り。」
初爻は潜航の時代であって、世に出る時ではない。まだガキの時代である。何事も外に出るときではない。
二爻はようやく力を発揮させ るときが来たのである。初爻が幼年期少年期ならば二爻は青年期である。
三爻は日夜精勤して身を粉にする働き盛りの時である。
四爻は、 躊躇するときで、今やらなけりゃいつやるのかと叱咤激励する。思慮が出てきて疑い深くなるときである。
五爻は功成り四海に光り輝く ときである。今までの苦労を思い起こすことができる。上爻は盛運も去り退くべきときで、隠居すべき
ときである。
易は生活の匂い
乾は純陽(じゅんよう)であるから空想上の龍で言い実態に乏しく、坤為地(こんいち)は純陰(じゅんいん)であるから実在する雌馬
(ひんば)で言い現実的である。
上爻
五爻
四爻
三爻
二爻
初爻
坤為地の初爻に「小さいときの悪癖を厳しく矯正せよ」
二爻に「豊かな大地の包容力と母の心で成功する。」
三爻に「功を他に譲る謙虚さ。」
四爻に「財布の口を締めよ(出たものは戻らない)。」
五爻に「めだたない着物を羽織る周囲への優しさ。」
上爻に「小事はついに大事件になる。」
乾と坤
乾 空の色、時間、精神、神祇、竜、 奇数、栄誉、父。
坤 黄、 空間、物象、人間、牝馬、偶数、汚辱、母。
乾と坤が交わり坎(かん)、離(り)となる。乾と坤の交わりは宇宙の生成化育である。火水未済(びさい)、水火既済(きさい)がそれで
ある。初爻、三爻、五爻が陽の位とい う。二爻、四爻、上爻を陰の位という。
水
火
位が整っているのが水火既済である。
火
水
位が全てひっくり返っているのが火水未済である。水火既済は理想的な結末、陰陽の位置が正しく整っている水火既済は理想的な結末
。ところが水火既済を本卦(ほんか)に得たら結末が先に来て後は乱れる。却って 悪いのである。逆に陰陽の位置が全く逆転している
火水未済は結末を得ず凶である。しかし本卦に火水未済を得たら段々と良く成るので ある。吉は凶の始まりで凶は吉の元と言える。
男女のまつわりごとでどちらが先に言葉かけをしたのかと問われると水火既済は男であり、 火水未済は女の方から言葉掛けをしたも
のである。
易の四難卦
易には苦しみの卦として四難卦があります。これは水に縁がある 水雷屯(すいらいちゅん)、水山蹇(すいざんけん)、坎為水
(かんいすい)、沢水困(たくすいこん) です。
水(すい)は数の六です。六の象徴として水、狐、全て地に潜り穴に隠れるもの、とげの有るもの、いばら、陥穽、険難、憂える、流
浪、深く人目を忍ぶ、盗賊、流線 型の車、黒。
雷(らい)の数は四、八、三、電気、スピードの出る車、草木繁茂、大道路、足、野菜、青。
水
雷
それで合成しているのが水雷屯である。
水雷屯は動いて穴に落ちる。直ぐには上手くいかない。
屯の初爻「地位低くて上進するは早すぎる。下位にいて人心を得る。」
二爻「行きつ戻りつする。まだまだ先が見えない。」
三爻「外出して案内人がおらず行こうか帰ろうかと迷っている。」
四爻「時来れば積極的に下に求めていくこと。」
五爻「資金不足で威光が全体に行き渡らない。下より不満の声が上がる。」
上爻「略奪されてただ泣くのみ。」(略)
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